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真樹先生追悼イベント

July 15, 2012

に参加させて頂きました。 故真樹日佐夫先生とは、「タイガーマスク」の原作者である故梶原一騎先生の実弟で、ご自身も「空手バカ一代」などの不朽の名作の数々を残し、日本の格闘技界に大きく影響を与えた一人です。 星条旗通りにある真樹道場は、家の近くにあるため小さい頃からいつも眺めていました。僕が実際に真樹先生とお会いしたのは、もう一年半前、実写版「タイガーマスク」の制作が決定し、脚本を書き上げた時でした。第二稿のご意見を聞きに道場に行くと、熱のこもったトークは深夜にまで続き、たくさんの貴重なアドバイスを頂きました。何より、伝説にまでなっているヤクザとの喧嘩やプロレスラーであるタイガーマスクが登場するようになった経緯などの話を聞けたのは一生忘れないと思います。以後、1年間に渡って作品が完成するまで様々な形でサポートして頂きました。 今年の1月2日に突如この世を去られてしまったのですが、最後にお会いしたのはその約二週間前、「タイガーマスク」の撮影現場でした。その漲るオーラと圧倒的な存在感で現場のスタッフやキャストがいつになく緊張していたのを覚えてます。深夜にまで続いた過酷な現場を離れる時、力強い握手を交わさせて頂き、「この作品は俺にとって本当に大事な作品だ。期待してるぜ!」と言って颯爽と風を切って歩いていった後姿が僕の先生の最後の思い出です。お会いしてから本当に短い間でしたが、いわゆる「漢の生き様」を垣間見た気がしました。 後日談ですが、撮影現場から帰りの車の中で、三池崇史監督と「あいつは面白い。作品を見るのを楽しみだ!」とお話されていたと運転手をしていた方から聞きました。残念ながら、先生に完成した作品をお見せする事は出来ませんでしたが、今頃はお兄様とお酒を酌み交わしながら、格闘談義をされていることと思います。公開はまだ暫くお時間がかかりそうなので、もう少しだけお待ち頂ければと思います。お二人の先生のご期待に添える作品に仕上がったかどうかは分からなくなってしまいましたが、御陰さまで持てる力を全て発揮し、自己最高の作品になった事は間違いないです。 心より追悼の意を表します。

おニューの靴

June 16, 2012

ロスで、新しいジョギングシューズを買ってしまった!なんか、裸足のような感覚で走れるらしい。円高のせいもあり、日本で買うより大分安かった。 新しい靴を買ってこんなにウキウキしたのは、高校の時にバッシュを買ったとき以来だ。あの時は、靴を買うのが嬉しくてしょうがなかったし、履き始めの頃は、高く飛べた気がしてならなかった。(ジャンプ力は相当低かったけど)しかもスラダンにならって、バスケ部のみんながわざと新しい靴を踏んだりしたな。懐かしい。 ただせっかく買ったのに、雨だし、時差ぼけだしでまだ走れていない。早く、そして速く走りたい!

プロメーテウス

June 12, 2012

先日、「プロメーテウス」を映画館で見た。久しぶりにアメリカサイズのIMAXで見るうえ、リドリースコット監督の最新作で、しかも大好きな「エイリアン」シリーズだったので、大分高揚して見に行った。まだ見てない人の為にも、なるべく内容に触れずに感想を書いてみる。 「プロメーテウス」は、期待していたSFアクション映画と全く違って、どちらかというと哲学的な嗜好の強い映画だった。典型的なハリウッド映画のように善と悪がはっきりしていなかっただけに、何が起こるのか予想出来ないという意味では面白かったが、登場人物の誰にも感情移入出来なかったので、正直あまり好きになれなかった。ただ、しばらく記憶に残るような壮絶なシーンが1シーンあったのと(見てからのお楽しみ)、見た後に大分考えさせられたという意味では見る価値のある映画だった。 映画の中では宇宙船の名前として使われている「プロメーテウス」という言葉は、もともとギリシャ神話の神々の一人で、ゼウスによって取り上げられた「火」を人類に戻したとされ、「先見の明を持つ者」の意を持つ。映画のテーマは、宇宙船の乗組員のロボット、デビットによって語られる。「人はどこから来て、どこへ行くのか?」 人類史上、常に問われ続けていた最もシンプルかつ不可思議な質問に対する問いかけが、キリスト教信者の主人公、エリザベスと無神論者のロボット、デビットによって、地球より何万光年も離れた星で繰り広げられる。 こういう「創世」がテーマの映画はそもそも日本ではあまり見かけない。あまり日本人に馴染みがないテーマだからな気がする。 聖書のヨブ記で、神はヨブに問いかける。「あなたは地の基を定めたとき、あなたはどこにいたのか?、、、死の門があなたにあらわれたことがあるか?」地の基を定めた時というのは、神がこの地を創造したときのことだが、要するにお前はどこからきてどこにいくのかを知っているのか?ということだ。 西欧人や中国人は、えてして人間の起原について探求し続けている気がする。一方、辺境の民である日本人は、古事記などの書物があるものの、あまり親しまれてないのは結局、始まりと終わりについてあまり関心がないからなのかもしれない。どちらかというと、始まりや終わりより過程を重視する傾向にある。その理由の一つとして、現代の日本人は宗教心がそれほど強い国ではないからだと思う。宗教には、ほぼ必ずといっていい程、人類の起原と終焉が定められているから、始まりと終わりを教えられる。 宗教の代わりに日本には「道」という考え方が浸透している。新渡戸稲造が書いた武士道もそうだが、剣道、書道、華道、柔道、何かを極める「道」という考え方で、その道には終わりがなく特に始まりも明確にあるわけではない。ただひたすら師を追い、やがて弟子に追われながら鍛錬をし続け、その道を極めようと歩き続けるという考え方だ。しかし、西洋では「頂上」を目指すという考え方が多い。そこにには「ふもと」という始まりがあり、頂上という終わりがある。この考え方の違いは、文化も含め日々の生活の中で大きく違いを感じられる。 日本をしばらく離れてから、日本に戻り長い間滞在していたからなのか、最近、辺境の民である日本人という意識が自分の中で再度芽生えてきた気がする。だからこそ、先週アメリカに戻って来た時、少し違和感があり、また小さい事で言えば、洋画の受け入れ方も大きく変化してきたと思う。例えば「プロメーテウス」の最後にロボットのデビッドはエリザベスに問いかける質問がある。昔の僕ならエリザベスの意見をすんなり同感していたのかもしれないが、今の僕には彼女よりもロボットに同感してしまっている気がする。 19歳から28歳になるまでの日々をほぼアメリカで過ごしたことは、「タイガーマスク」を制作するにあたって大きく影響を及ぼした。28歳の一年間をほぼ日本で過ごし、自分が日本人である事を再認識した事が、今後の僕の作品に大きな変化を与えることになる気がする。今年は20代最後の年。どんな映画が作れるか楽しみだ。

「ラッシュ」ハンバーガー

June 7, 2012

久しぶりにラッシュのバーガーを食べにいった。 ロスの家の近くにある有名なバーガー屋で店内には無数のテレビがあり、スポーツを流しながら、地元の人たちがビールやポテトやバーガーを楽しむという非常にアメリカンな場所だ。 人それぞれ違うと思うが、それを食べると戻って来た感じするものって場所によってってあると思う。 僕の場合、ロスはバーガーで、NYはピザ、ローマはエスプレッソ、パリはパン。 それぞれ食べた時、一緒に食べた人の思い出詰まった味がする。 日本の場合はなんだろう?ラーメンとか寿司とかソバとかも好きだけど、なんか違う気がする。 結局ありきたりだけど、母ちゃんの手料理だったりするのかもしれない。 中学や高校の友人にもたまに、お前の母ちゃんのメシが食いたいって言われることがよくあるくらいだ。 美味しいものが食べれるところに、人が集まりそこに思い出が生まれる。 幸いにして僕に友達が多いのは、母ちゃんの料理が美味しかったお陰も多々ある。感謝せねば。

Back To LA

June 6, 2012

というわけで、我が家に戻って来た。 さーって、久しぶりに懐かしいロスの美味しい物を沢山食べるぜ。 まずはハンバーガーかな。

同窓会

February 23, 2012

今年になって、同窓会的なものがたくさんあり、小学校、中学校、高校、大学、大学院と、様々なメンバーと久しぶりに会った。もちろん結構頻繁に会っている人もいれば、3、4年ぶりの人から12年ぶりの人まで様々だった。当たり前の話だが、変わってない人もいれば、めちゃくちゃ変わった人もいて、最初は誰だかわからないくらいだった。特に驚いたのが、結婚した人、親になった人がすでに結構いるという事だ。なんか既婚者と未婚者の違いは相当大きい気がする。 高校以前の友人は、会社務めが大半だったが、大学以降は映画業界が大半だ。ただ、卒業してから数年、色々な理由から業界を去って、新しい分野の仕事を始めた人も少なくなかった。アメリカ人と日本人の違いでちょっと面白いなと思ったのが、日本は奥さんや旦那さんを嬉しげに自慢する人は一人もいないが、アメリカはうちの旦那は優しいとか、奥さんは世界一美人だぜとか、平気で言う。ただ、うちの子供はめちゃくちゃ可愛いから子役が必要な時は言ってくれ、というのはどこの国も変わらない。でも僕が幸運にもいつか結婚出来たら、子供じゃなくて奥さんの事を自慢する気がする。 人生が楽しそうな人もいたし、辛い時期の人もいたが、集まれば結局昔の話で盛り上がれる。 ただ以前、同窓会から帰って来た親父が、過去を振り返り昔の話をする事ほど楽しい事はないが、それは今を真面目に生きているからだ、と言っていたというのを思い出した。次の集まりを楽しむためにも、今日を楽しもうと思う。なんか良い刺激をたくさん貰った。 写真は高校バスケ部。また一人結婚するようだ。めでたい。

もう帰国

January 14, 2012

*久しぶりに見つけた高校2年の時の写真。クラス替えして初めて遠足(?)行った。場所どこだっけ? あっ という間に10日間が過ぎ、日本に帰る(?)日になった。時差ぼけが直らず、2−3時間寝ては10時間起きてみたいな日々の繰り返しだったので、色んな意 味で作業効率はあまり良くなかった気がする。結局、あまり息抜きも出来ず、仕事に追われた毎日だったが、やりたい事、会いたい人などはたくさんいたが、久 しぶりに大学、大学院の友人と集まって去年の話をするのは楽しかったし、良い刺激になった。ロスの映画館のでかいスクリーンで何本か映画を見れたのも久し ぶりで興奮した。 3月くらいまでは日本で、引き続き「タイガーマスク」に取り組みながら、新作の脚本の執筆作業、そして新しい企画の開発になる。今年は今まで貯めて来たものを実現していく年にしようと思います。 では、空港に。機内の映画が楽しみだな。しゅわっち!

北村監督とディナー

January 13, 2012

先日、北村監督とメシを食った。 アメリカで活動/活躍している数少ない(5人いないのでは?)日本人監督の一人だ。業界では大分有名な監督だが、念のため過去にはこんな作品を撮っている。 ヒート・アフター・ダーク(1999年) VERSUS -ヴァーサス-(2001年) Jam Films 「the messenger -弔いは夜の果てで-」(2002年) ALIVE -アライブ-(2003年) あずみ(2003年) 荒神(2003年) スカイハイ 劇場版(2003年) LONGINUS(2004年) – DVD作品 ゴジラ FINAL WARS(2004年、東宝) LOVE DEATH(2006年) ミッドナイト・ミートトレイン(2008年) BATON (2009年) – CGアニメ作品 僕より一回り上で誕生日が一日違い。若い頃オーストラリアに留学し、日本で映画を撮り始め、2006年からロスで活動している。諸々の事情で、ハリウッドデビュー作のミッドナイトミートトレインはヒットこそしなかったが、彼の評価はハリウッドで非常に高く、ある批評家はimdbという映画のデータベースで「最も偉大な監督50人」の中で27番に入っている。(1位はデビッドフィンチャー。黒澤明は19番目) ちょうど一昨年、北村監督が岩井俊二監督、青山真治監督と三人でUSCで日本の映画について講義をした時に知り合い、ビバリーヒルズの自宅で夕飯を御馳走になった。色々とアドバイスを貰っただけでなく、話し方が非常に上手く、しかも非日常的な経験が豊富なため、時間があっという間に過ぎてしまう。その時の会話の中で、僕が長編を撮影したらもう一度ご飯を食べるという約束をした。北村監督は、そういう事を俺に言ったヤツはたくさんいたけど、今まで本当に実現させたのは過去一人しかいなかったな、言った。(ちなみにその一人は山口雄大監督) その約束から約一年半かかったが、昨年の12月に幸運にも長編を撮影するチャンスを頂き、今回ロスに戻って来たときに報告がてら、メシをご一緒させて頂いた。 2011年は僕にとってチャンスの年でこそあったが、肉体的にも精神的にも苦労が耐えなく、今までで一番辛い年でもあったかもしれない。しかし、北村監督のデビュー作の苦労話を聞いたら、自分がどれだけ恵まれた状況でデビュー作を監督出来たか改めて気付かされた。助監督で参加して、初日の3時間で殴り合いの喧嘩になったことや、その後自分でかき集めたお金でデビュー作を作るまでに至る血の滲むような苦労と友情の話。必死で口説き倒し出演してもらった俳優、聞いてるだけで切なくなる撮影秘話、撮影終了後2年かけて配給までこぎつけた単館レイトショーなどなど。それでも終わらせて上映し、次に進む事に意義があると言っていた。色々な山や谷を越えて来ただけに、一つ一つの言葉が非常に力強かったし、心に響いた。 北村監督は今ハリウッドで第二作を終わらし、今年は後二本控えているので、忙しくなりそうだと言っていた。公開が非常に楽しみだ。 そして昨日大学院の同期の監督と会って、ホットドッグを食べ、ビールを飲みながら去年の事について話した。彼は、去年三本長編の話があったが、二つは流れ、一つは17日間の撮影が終わり、編集が終わった所で理不尽な理由によりその作品は永久にお蔵入りになってしまうと言っていた。 当たり前の話だが、皆、表向きに成功しているように見えていても陰ではものすごく苦労している。そして何よりそれを乗り越える努力をしている。漫画の「はじめの一歩」の受け売りだが、「努力しても成功するとは限らない。しかし、成功している人は皆努力している」 僕も更なる精進を重ねなければいけない。

手紙

January 8, 2012

2時に寝たのに、時差ボケで朝六時にはお目目ぱっちりなので、ブログを少々。 ロスに戻ってくると手紙の山だった。ジャンクメールというのか迷惑メールというのか知らないが、基本的にそういう部類の手紙が大多数だが、それに埋もれて一枚のクリスマスカードが目に留まった。宛先を見なくても、字を見なくても、すぐに誰だかわかった。 渡米してから今年で10年目になるが、この10年間、毎年必ず誕生日の手紙とクリスマスカードを書いてわざわざロスの僕の住所宛に送ってくれるからだ。僕も毎年返信しているが、郵送ではなくメールの時もあるし、出せてない年もあったりした。 自分で言うのもなんだが、僕はどちらかと言えば筆まめな方で、普通の人よりは手書きの手紙を好んで書く方だ。しかも字が非常に汚い。ただ、手紙を書くからこそ分かるが、継続的に、定期的に誰かに手紙を送るという事は非常に手のかかる事だと知っている。だからこそ毎年届く手紙を見る度に、感謝の気持ちで一杯になるし、自分の事をいつも応援してくれる文面にはすごく勇気づけられる。 手紙を出してくれるのは、僕の高校時代のカフェテリアのおばちゃんだ。 すごく上品な人なので、カフェテリアのおばちゃんというと語弊があるが、当時からいつもかわいがってくれて、大盛り券無しにいつも大盛りにしてくれてたし、放課後遊びに行くと僕のために特別ケーキを用意してくれたりした。若い頃、渡米経験がある彼女は、僕が日本の大学に進学せずにアメリカで映画監督を目指すという馬鹿げた夢を誰よりも親身になって聞いてくれてたし、絶対夢を諦めるなと鼓舞してくれた。手紙を書くから向こうで住所が分かったら教えてくれと言われ、以来、彼女はこの10年間欠かさず手紙を書いてくれるし、僕の映画が日本で上映がある度に来てくれている。 僕のような不安定な職業を志す人間にとって、常に応援してくれる人の存在は計り知れないほど大きい。そういう方達が居てくれるからこそここまで来れたし、そういう方達のためにも更に頑張らないといけない、と手紙が届く度にいつも思う。この場を借りて、彼女にお礼が言いたい。無謀な夢を追いかけ続ける僕の事を信じ、毎年、毎年、素敵なお手紙を送って頂き、本当にどうもありがとうございます。 次に手紙が届く頃には、僕はもっと良い監督になっていたい。

ガール ウィズ ドラゴンタトゥー

January 7, 2012

見てしまった。噂は聞いていた。特報を見た時ちびり、(あのカットがすごい早いヤツ)予告編を見た時、背筋に寒気を覚えた。本は読んでないし、スウェーデンのオリジナルも見たかったが大好きなデビットフィンチャーが監督するというので、先にこっちを見ようと見ない様にしていた。 衝動的にぶらっと近くの映画館に見に行ったが、一人で見に行って良かった。男友達ならまだいいが、女性や家族と見に行ったら非常に気まずくなる映画だと思う。(老夫婦が映画館に多くてびっくりしたけど)確実に好きか嫌いに別れる作品だが、僕は非常に好きだ。久しぶりにこんなバイオレンスでセクシーな映画を見た。もうオープニングタイトルシークエンスを見た時に、こんな素晴らしい世界に3時間もいさせてくれるフィンチャーに感謝していたが、その後も2時間48分間、一分もつまらないとは思わなかった。 まだこれから見たい人もいると思うので、中身に関してはあまり詳しくは書かないが、女性に対する暴力への反抗がメッセージとして感じられた。僕が一番嫌う犯罪行為だから、その部分が全面的に押し出されているように感じたかも知れない。正直、痴漢とかレイプとかセクハラとかに対しては言葉では言い表せないくらい嫌悪感を覚える。そういう犯罪に対するアンチテーゼによって本作は描かれているので、僕は主人公のジャーナリストよりも、もう一人の主人公である社会に適合出来ていない天才少女を応援したくなるし同情もする。 さて中身ではなく、テクニックについてだが、「描写する題材ではなく、描写する表現方法の方が大事である」というのはヒッチコックの言葉だ。画家が描いたリンゴの絵があるとすると、画家がなぜリンゴを描いたのかではなく、どうやってリンゴを描いたかの方がアーティストにとって大事であると彼は言っていた。それに同感するわけではないが、この作品はそうかもしれないと思う。フィンチャーらしさが存分に出ている作品だった。絶妙なタイミングで主人公がスイッチするのも素晴らしいし、編集のリズムも音楽のセンスもダークな照明も抜群だ。それにカット(アングル)の数が半端じゃなかった。アメリカは日本と違い、様々なアングルで同じシーンを通して取るので、役者の人たちはシーンを最初から最後まで何回も通して演技をする。日本ではカット割りという技法で、時間の節約のため(昔はフィルムの節約のため)このアングルではこの台詞からこの台詞までしか撮らない、という方法が主流だ。アメリカではテレビでしかカット割りを使っていない。しかもフィンチャーは1つのアングルに平均して20テイクぐらい撮る。40テイクもざらにあるらしい。つまり1シーンに対して12のアングルがあったら、単純計算で240回同じシーンを撮り続ける。 そこまで一つ一つのショットにこだわっているから、こういうすごい映画が出来るのかと思う。普通、映画を見ていると、技術的なミスが最低でも2、3、目に止まる。(ひどい時は多すぎて数えられないくらいあるけど、、、)しかし、この映画を見ていたら一部の隙もなく、1コマ1コマからサウンドまで全てが意図的に作られているようで、その類いまれなテクニックに終始魅了されっぱなしだった。(スピルバーグのタンタンもそうだったな) 役者の一人がインタビューで言っていたが、フィンチャー監督は自分のやりたい様に撮るために撮影時間をきちんと確保すると言っていた。駆け出しの頃からそういう風に出来ていたわけではない。ただこの映画を見て、僕は別に240回も同じシーンを撮ろうと思わないが、自分の想い描いた映画を作るために必要な事をきちんと確保出来るような監督になるのを今後の大きな目標にしたいと思った。