ライ麦畑
中学校一年生の頃、一番最初の授業で国語の先生が後ろポケットからおんぼろの単行本を取り出し、「私の世界を変えた本です」と言って取り出したのが『ライ麦で捕まえて』だった。
ジョンレノンを殺したマークチャップマンの愛読書だったそうです、と付け加えると、彼はその本がどうやって彼の世界を変えたのかということについて語りだした。
ここではあえてその内容にはふれない。それはその話を覚えている生徒と彼だけのものだからだ。最後に彼は、「皆さんもそういう本との出会いがあるでしょう。このクラスが君たちの本との出会いの手助けになれればと思っています。」と授業を終えた。
それから5年後の高校二年生、アメリカに留学するために英語の勉強を本格的に始めた夏、初めて読む英語の本は『ライ麦畑でつかまえて』にしようと思った。偶然にも2ヶ月前、『ハーフケニス』の弟役の子の誕生日にあげた本が『ライ麦でつかまえて』でもあった。サリンジャーの死で、もう一度あの本を読み返そうと思った人は、僕も含めて何万人といると思う。
大切な本との出会い、曲との出会い、そして映画との出会いは思いもかけずにやってくる。それは思い出と共に僕らの心に深く刻み付けられていくものだ。
傲慢かもしれないが、いつか誰かの心に響くような映画を作れるよう、これからもずっと映画を作り続けていきたい。
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